その顔はみんな心配そうにしている。


だけどまさか萌が余命宣告されているだなんて、思ってもいないはずだ。


「うん大丈夫だよ。心配かけてごめんね」


ようやく言葉が喉の奥から出てきた。


苦笑いを浮かべて、大したことじゃなかったんだよと説明する。


嘘をついているという罪悪感と、誰かに本当のことを話したいという気持ちが湧き出てくるのを感じる。


けどダメだ。


自分のせいでクラス全体が暗くなったり、気を使わせるようなことにはしたくなかった。


萌は学校で倒れた原因を貧血のせいだとしてみんなに説明した。


同年代で貧血を持つ生徒は多いので、すぐに納得してくれる。


とりあえずは質問攻めから逃れることができて安堵していたが、問題は希だった。


希はすでに登校してきていて自分の席に座っている。


しかし、萌が友人らに取り囲まれているせいか、まだ挨拶も交わしていなかった。


希にだけは本当のことを伝えておきたい。


その気持が強かった。


希とは親友だと思っているし、大樹に引き合わせてくれたのも希だ。