しかし萌は無理に笑顔をつくることもできなかった。


どうしてひきつってしまうし、今にも泣き出してしまいそうなのだ。


「大樹、今更萌に会いにきたの?」


険しい希の声に大樹はまばたきをする。


「彼氏が彼女に会いに来るのは普通だろ?」


なんでも無いことのように言う大樹に、希は舌打ちしたい気分になった。


大樹は自分の浮気がバレていることに気がついていないのだ。


「とぼけないでよ。私、見たんだから!」


そう言ったのは萌だった。


声は震えて顔色も悪いけれど、しっかりと大樹を見ている。


「え?」


そんな萌を見たことのない大樹は一瞬とまどい、手を離してしまった。


「別の女の子とキスしてた!」


公園で見た光景がまた鮮明に思い出されて、涙が溢れ出す。


他のクラスメートたちの前だけれど、もうかあまわなかった。


萌に責められた瞬間大樹はハッとしたように目を見開いた。


自分の見に覚えがあるからだろう。


「こっちには写真もあるよ」


そう言ったのは萌に写真を送ってくれた友人だった。


友人は目を吊り上げてスマホ画面を大樹へ見せる。


言い逃れができなくなった大樹は言葉を失い、その場に立ち尽くしている。


「萌、これには理由があるんだ」