5月のある休日、奈緒は暇を持て余していた。誰かと会う約束があるわけでもなく、かといって何か用事があるわけではない。
勉強も昨日のうちに宿題や復習を終わらせたし、今日は何をしようかな?そう思いながらベッドの上でSNSに目を通していた。
「あ、これ面白そう」
SNSを見て回っていて目についたのは、最近話題のミュージカル映画だ。歌も演技もすごいって評判なんだよね、今日は予定もないし見に行ってみようかな。
そうと決まればベッドから起き上がって出かける準備をする。服を着替えて髪を整える。髪の毛はおろしていこうかな。そうして最後に姿見で自分の姿を確認する。
よし、変じゃないよね?リビングにいるお父さんとお母さんに出かけると声をかけて、靴を履き家を出る。
「行ってきまーす」
今日は晴れているため、日差しが強くちょっと汗ばむ。日傘持ってくればよかったな、なんて考えながら駅まで歩く。電車に乗り映画館の最寄り駅までスマホをいじって時間を潰す。
そういえば私のまわりには映画を良く見る人あんまりいないんだよね。見ていたとしても恋愛映画とかアニメ映画とかが多くて、ミュージカル映画を語れる人がいない。
もちろん見終わったらSNSにネタバレしない程度に感想を書いたりするけれど、どうせなら誰かと直接語り合いたい。そんなことを考えていたら最寄り駅についていた。
「外あっつい…」
電車から出た瞬間強い日差しがあたる。日差しを浴びながら映画館まで歩いていく。映画館につき館内に入ると冷風があたって気持ちいい。それじゃあチケットと飲み物を買って席に着こう。パンフレットとかは映画見終わった後に覗きに行こうかな? そんなことを考えながらチケットと飲み物を買っていると、知っている人を見かけた。
「あ、西野くん」
私のその声が聞こえたのか、ちらっとこっちを見た後軽く会釈をしてシアターがある方へ歩いて行った。西野くんも映画見に来てたんだ、何を見に来たのかな?
飲み物をもらってシアター内に入るともうCMがはじまっている。私は指定された席に座ってスマホの電源を切りCMを見始める。このCMを見るのも楽しいんだよね! 次何を見にこようか考える材料になるし、今まで興味のなかったジャンルも見ようかなって思ったりするんだよね。そしてCMが終わり、ついに映画が始まった。
面白かった~! 私は席から立ちあがりながら映画の余韻に浸っていた。これは話題になるのもわかる!! 歌もダンスもシナリオも本当によかった、特に歌が素敵だった。
これは今すぐ誰かと語り合いたい、そう思いながらシアターを出ようとしていると、西野くんの姿が見えた。
「西野くん!!」
私は映画の興奮がやまず、思わずちょっと大きめの声で西野くんの名前を呼んでしまった。彼は驚いたような顔をした後、こちらに歩いてきた。
「西野くんもこの映画見に来てたんだ! すごい面白かったよね」
「う、うん。すごかった。特に歌が上手くて…、字幕で見てよかった」
「だよね、やっぱり歌素敵だったよね!」
そんなことをシアターから出ながら話す。西野くんも映画を見た後の興奮が冷めないのかいつもより饒舌だ。これはもしかして一緒に語れるのでは?
「ねえ、もしよかったらこれから喫茶店に入って今日の感想話さない? 私ミュージカル映画話せる人がいなくて」
西野くんは少し顔をうつむかせて悩んだようなそぶりを見せた後、眼鏡越しに目を合わせてうなづいた。
「うん、早川さんさえよければ」
「やった! じゃああそこの喫茶店にはいろう」
喫茶店に入り西野くんはアイスコーヒーを、私はアイスティーを頼んですぐに映画の感想を話し合った。あそこの場面で流れる曲が最高だった、主人公のあの行動はどう思う?私はあのバーでのダンスシーンが一番好き、俺はヒロインが一人きりで歌っていたシーンが一番かな、などなどお互い頼んだ飲み物がきてもほとんど手を付けず語り合っていた。
「いやー、本当によかった…、最後はハッピーエンドだったし」
「確かに、途中はらはらしたけど最後ハッピーエンドで安心したよね」
1時間ほど語り合った後、お互い氷の溶けた飲み物を飲んで喉を潤す。楽しい、やっぱり映画をみた直後に感想を語り合うのは楽しい。西野くんに会えてよかった。そんなことを考えていると、彼は目線をうろうろとさせてどこか居心地悪げな顔をしながらこんなことを言った。
「今日はごめんね、避けるようなことをして」
「え?」
「俺、人づきあいが苦手で…、あの時もどう反応するのが正解かわからなくて」
ちょっと落ち込んだように肩を落としてそんなことを言った。なんだ、そんなことか。
「気にしてないよ、それより西野くんって映画好き?もしよければまたこうやって話さない?」
すると西野くんは少し驚いたような顔をした後、嬉しそうにうなづいた。そしてまた学校で話そうと約束してその日は解散した。
家までの道のりを歩きながら今日のことを思い返す。西野くん、思っていたよりも親しみやすい人だったな、これから少しずつ話しかけていこう。
そう決めた私は今度西野くんにおすすめする映画のことを考えるのであった。
勉強も昨日のうちに宿題や復習を終わらせたし、今日は何をしようかな?そう思いながらベッドの上でSNSに目を通していた。
「あ、これ面白そう」
SNSを見て回っていて目についたのは、最近話題のミュージカル映画だ。歌も演技もすごいって評判なんだよね、今日は予定もないし見に行ってみようかな。
そうと決まればベッドから起き上がって出かける準備をする。服を着替えて髪を整える。髪の毛はおろしていこうかな。そうして最後に姿見で自分の姿を確認する。
よし、変じゃないよね?リビングにいるお父さんとお母さんに出かけると声をかけて、靴を履き家を出る。
「行ってきまーす」
今日は晴れているため、日差しが強くちょっと汗ばむ。日傘持ってくればよかったな、なんて考えながら駅まで歩く。電車に乗り映画館の最寄り駅までスマホをいじって時間を潰す。
そういえば私のまわりには映画を良く見る人あんまりいないんだよね。見ていたとしても恋愛映画とかアニメ映画とかが多くて、ミュージカル映画を語れる人がいない。
もちろん見終わったらSNSにネタバレしない程度に感想を書いたりするけれど、どうせなら誰かと直接語り合いたい。そんなことを考えていたら最寄り駅についていた。
「外あっつい…」
電車から出た瞬間強い日差しがあたる。日差しを浴びながら映画館まで歩いていく。映画館につき館内に入ると冷風があたって気持ちいい。それじゃあチケットと飲み物を買って席に着こう。パンフレットとかは映画見終わった後に覗きに行こうかな? そんなことを考えながらチケットと飲み物を買っていると、知っている人を見かけた。
「あ、西野くん」
私のその声が聞こえたのか、ちらっとこっちを見た後軽く会釈をしてシアターがある方へ歩いて行った。西野くんも映画見に来てたんだ、何を見に来たのかな?
飲み物をもらってシアター内に入るともうCMがはじまっている。私は指定された席に座ってスマホの電源を切りCMを見始める。このCMを見るのも楽しいんだよね! 次何を見にこようか考える材料になるし、今まで興味のなかったジャンルも見ようかなって思ったりするんだよね。そしてCMが終わり、ついに映画が始まった。
面白かった~! 私は席から立ちあがりながら映画の余韻に浸っていた。これは話題になるのもわかる!! 歌もダンスもシナリオも本当によかった、特に歌が素敵だった。
これは今すぐ誰かと語り合いたい、そう思いながらシアターを出ようとしていると、西野くんの姿が見えた。
「西野くん!!」
私は映画の興奮がやまず、思わずちょっと大きめの声で西野くんの名前を呼んでしまった。彼は驚いたような顔をした後、こちらに歩いてきた。
「西野くんもこの映画見に来てたんだ! すごい面白かったよね」
「う、うん。すごかった。特に歌が上手くて…、字幕で見てよかった」
「だよね、やっぱり歌素敵だったよね!」
そんなことをシアターから出ながら話す。西野くんも映画を見た後の興奮が冷めないのかいつもより饒舌だ。これはもしかして一緒に語れるのでは?
「ねえ、もしよかったらこれから喫茶店に入って今日の感想話さない? 私ミュージカル映画話せる人がいなくて」
西野くんは少し顔をうつむかせて悩んだようなそぶりを見せた後、眼鏡越しに目を合わせてうなづいた。
「うん、早川さんさえよければ」
「やった! じゃああそこの喫茶店にはいろう」
喫茶店に入り西野くんはアイスコーヒーを、私はアイスティーを頼んですぐに映画の感想を話し合った。あそこの場面で流れる曲が最高だった、主人公のあの行動はどう思う?私はあのバーでのダンスシーンが一番好き、俺はヒロインが一人きりで歌っていたシーンが一番かな、などなどお互い頼んだ飲み物がきてもほとんど手を付けず語り合っていた。
「いやー、本当によかった…、最後はハッピーエンドだったし」
「確かに、途中はらはらしたけど最後ハッピーエンドで安心したよね」
1時間ほど語り合った後、お互い氷の溶けた飲み物を飲んで喉を潤す。楽しい、やっぱり映画をみた直後に感想を語り合うのは楽しい。西野くんに会えてよかった。そんなことを考えていると、彼は目線をうろうろとさせてどこか居心地悪げな顔をしながらこんなことを言った。
「今日はごめんね、避けるようなことをして」
「え?」
「俺、人づきあいが苦手で…、あの時もどう反応するのが正解かわからなくて」
ちょっと落ち込んだように肩を落としてそんなことを言った。なんだ、そんなことか。
「気にしてないよ、それより西野くんって映画好き?もしよければまたこうやって話さない?」
すると西野くんは少し驚いたような顔をした後、嬉しそうにうなづいた。そしてまた学校で話そうと約束してその日は解散した。
家までの道のりを歩きながら今日のことを思い返す。西野くん、思っていたよりも親しみやすい人だったな、これから少しずつ話しかけていこう。
そう決めた私は今度西野くんにおすすめする映画のことを考えるのであった。