その後のことはほどんど覚えていない。
彼がどうなったのか。
私の目の前から本当に、消えてしまったのか。
昔彼が言っていたことを思い出す。
「僕、弱いけど、ちゃんと冬華ちゃんのこと、守る。冬華ちゃんが、いじめられたりしてたら、僕が助けるからね」

「全然助けれてないじゃん」
私は泣き続けたのはちゃんと覚えてる。
私1人だけ置いてくき?
だったら私も…
手すりに向かおうとしていた時、
「ごめんね」と聞こえた気がした。
きっと空耳だ。
私はとっさに手すりに置いた手を下ろした。
その場に崩れ落ちて、また泣いた。
泣くなんて、恥ずかしいことだ。
でも、涙が止まらないものは仕方がない。
その瞬間、ドアが開く音がした。私のクラスの担任だ。担任は私に駆け寄り、黙って座っていた。
その時、救急車の音がした。
きっと青戸を病院に運ぶためだ。
しばらくそこで泣いていて、おさまったら担任が戻ろうと言ってるような顔をしていた。
数分泣き続けたあと、先生は立ち上がって歩き出した。
私は先生に後ろからぞろぞろと鉛のように重い足を引きずっていた。
その後、彼はこの席に、この教室に、私の目の前に現れることはなかった。