彼は…彼は屋上の手すりに乗っていた。
私は思わず叫んだ
「青戸！！」
こんなに大きな声は出したことはない
こちらを見ると、彼は貼り付けた笑顔でこちらを見た。
苦しそうだった。そう、彼の顔からも位置からでも分かる。
彼は落ちようとしていた。屋上から。
私は思いっきり走って彼のところに行った。でも、突然今まで走っていた苦しさ分が一気に込み上げてきた。私は止まってしまった。息が出来ず、苦しい。私がもがいたって彼は止まらない。
なんでこんな時に限って足は動かないの？
鼓動が本当にうるさい。
私は叫ぼうとしても、叫べなかった。
やめて、やめて。なんで私の目の前から消えようとするの？
落ち着いてきた息に比べて鼓動はスピードを増していた。
私は必死に声を上げた。
「なんで、なんで、落ちようとするの？
私の目の前から、消えようとするの？」
何回も言葉が途切れたけど、ちゃんと言えた。
彼はこう言ったのみだった。
「僕は君と一緒にいちゃいけないんだ」