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久しぶりに郷里で聞くは、駅の音。

「あ!サユ!こっちー!」

無人改札の前から身を乗り出して
元友のユカが手を振ってるのが
見えた。

「久しぶり、ユカ。わざわざ
迎えに来てくれて、ごめんね。」

わたしが、
町を出た時にはまだ
常駐の駅員の姿はあったけれど、
ここも
人件費的にセルフ化している。

交通カードをタッチして、
ユカと合流すると、2人で手を
昔みたいに叩き合った。

「ユカ、全然若さ保ってるー。
本当に子ども2人とか見えない」

「よく言うよねぇ。サユなんか、
大手ブランドのディレクター?
とかいうんでしょ?すごいよ!」

「夢破れてだよ。すごくない。
ただのアパレル社員ってやつ。」

肩を竦めて
謙遜?してみるわたしの
今日の服装は
地元に合わせて控えめ。
それでもカラーは流行りの色で、
ディテールもエッジあるのを
選んで着てきた。


同窓会には元カレ、

ナガレだって
絶対来てるに決まってる。

駅前に出れば
最近は珍しくなった
電話ボックスのガラスに映る
自分のスタイルを確認して
盗み見る。

隣のユカが

「あ、『ヴィゴ』も来るって!
サユはどーする?サイン。
あたし、子どもに頼まれてさ、
ついでに色紙買うんだけれど」

「ヴィゴ、、そっか。てっきり
有名人だから来ないって、
思ってたよ。やだなあ、なんか
会い辛いけど、向こうも覚えて
なんかないよね。何処で買う?」

思わぬ参加者申告に、
同窓会への期待が変色。
すっかり小学校の初恋相手を
忘れいてた事に気が付く。

「サユは知らないかあー。
国道沿いに、おっきいショッピ
ングモール出来たんだよ!すぐ
車で行けるから。あの車ね。」

ユカはわたしの様子に
少し苦笑いをしつつ、
駅前のロータリーに
無防備に停めたEV車を指さした。

「ウィゴね、、微妙。」

ユカに促されて、
助手席のドアを開ける。
けれど、意識の向こうに
追いやっていた人物の
名前に、
ため息が出た。

『ウィゴ』こと『肥後タケル』。

今は登録者数何百万とかの
インフルエンサーになった、
JSからJCまで好きだった
わたしの初恋の君。

「サユ、有名だったもんね。
ウィゴ、えーと、かつての
タケルへのアピとかさ。同学、
みんな知ってるぐらいにー。」

ハンドルを握って車を出すユカは
カーステの音を少し上げた。

「うそ!ユカ!この曲って。」

「へっへー!いとおかしくない?
せっかくだからさ、いろいろ
探してきたんだよねー。♪~」

そう笑いながら、ちゃっかり
わたしの黒歴史を出してくる
ユカは懐かしい歌を口ずさむ。

そんなユカの横顔を
少しだけ忌々しい気持ちで
睨んでから、
わたしは外の景色に視線を
反らした。

今、流れている曲は、
わたし達が体育祭で
応援に使った、当時流行りの曲。

車の中から、過ぎて行く景色を
見ていても、
曲に合わせて頭の中は、
一気にタイムスリップしていく。

それはユカも同じなのか、

「タケルさ、結局高校に行って
から、ミナハと付き合ったでしょ
。それから結婚までしてさ。
ミナハんとこ社長令嬢だからさ。
それが有名になったとたん離婚
だよ! 知ってた、サユ。
クズくない?!サユは付き合わ
なくて正解だったよー。」

フラレた当時から、
わたしを庇う様に言うユカは、
今はウィゴになった初恋相手を
クズ判定でディスる。

「あのね、フラレたの。付き合
う、以前の問題だったの!」

わたしは助手席からユカを
もう1度軽く睨んだ。

「そうだった、そうだったね。
すごかったよねー。公衆の面前
てやつでさ。サユのこと思っ切
りフリやがって。あんなこと
しなかったら、学校中知られる
とか、なかったのにー最低ー」

畳み掛けて
黒歴史を話題にするユカに、
わたしは呆れながら降参した。

「しかも、ラップでね。」

「それそれー!ないわ。ない」

挙げ句にユカは、
片手でYo~yo~と手振りを付けて

『お前はお前に!釣り合うヤツ、
見つけて去れyo~!イエーイ~!』

あの時のラップを再現してきた。

思わず拳を握りしめるポーズを
取って、
わたしはユカに

「いい加減に、そのデリカシー
ない性格!矯正しようか?」

口を弓なりにして敢えて
スマイルをする。

「ごめん!ごめんてー!
ほらー、絶対今日その話出るし
先に軽~く、慣れとくかなって」

ユカは慌てて片手は
ハンドルを回しながら
謝るポーズをする。

車はユカが言っていた、
国道沿いのショッピングモールに
着いていて、
流れていたBGMは中途半端に
切れていた。

「まあ、そうなるよね。でも
本当に忘れてたよ、そんな事。」

わたしは
膝に乗せていたバッグを、
肩に掛けて車から降りる。

「それに、すっかり変わったね」

そして周りを見回すと、

「ここって、前は何があったとこ
だったっけ?ユカ覚えてる?」

キー音をさせるユカに
振り返った。

「うーん、なんだっけ?お店?
あー、国道沿いにカラオケとか
レストランあったでしょ?
夜のお店も、けっこーあって。」

その辺りになるかなーと、
ユカが自分のカバンを探っている

それを聞いて
わたしは徐に思い出した。
ここは、ナガレと来たことが
ある場所だ。

「そっか。どうりで既視感
あるって思った。国道沿いとか
来ることなかったから。」

車でなければ、
来ることのないカラオケに、、

「サユはバイクの免許取って
なかったけ?なら来ないか。」

ユカは漸くカバンに電話が
有ることに安堵をして、
ショッピングモールの入り口に
歩いていく。

ユカの言う通り、
バイクの免許さえなかった
わたしが、
この場所を覚えているのは
ナガレと来たからだ。

「初恋の君は忘れていたのにね」

ユカには聞こえない音で、
わたしは呟くと
店内のCMが後の言葉を
消していく。
わたしは
まだ新しく見える入り口に向けて
ユカの後を追いかけた。