観桜パーティー当日。
 またもや美桜は自分の準備ではなく、麗美の準備にあわただしく動き回っていた。
 今は麗美の着付けをしている。
「そこはもっと絞めて!」
「きつくしすぎ。ちょっと(ゆる)めて」
 美桜は自分の準備の時間に早く入るために、言いつけに黙って従っていた。
 文句は言いつつも頬に一発とんでこないのは今日は機嫌(きげん)がいいのだろう。
 着付けをし終え、自分がパーティーに着ていく着物を持ってないことに気づきおろおろしていると、さっそく怒号(どごう)がきた。
「お姉ちゃん、何をグズグズしているの?お姉ちゃんはこれ着て!本当はこんなもの着せたくないけど着させてあげるんだから、振る舞いとかしっかりして私に(はじ)をかかせないで!」
 (わた)されたのは、麗美が去年着ていた着物だ。
 もう少しぼろぼろのを着させられると覚悟(かくご)していたが、さすがに家族として自分が恥をかくのは嫌なのかもしれない。
 自分も最低限(さいていげん)の支度をし、家族そろって会場に向かうための車に乗り込んだ。
 久しぶりだな、と思った。最後に家族そろって出かけたのはいつのことだったか。
 そんなことを考えていると、天龍都についた。
 パーティーは毎年ここで行われるらしい。
 父が門で身分証らしきものを見せて中に入り、少し車を走らせたらあっという間に会場についた。
 家族が一緒にいるということは息苦しいけれど、初めて参加するパーティーに胸を(おど)らせて足を踏み出した。