家に帰ると、両親と麗美が何やら話していた。
「どうするのか?玲央君は鬼だから美桜が行かないことぐらいごまかせると思うが、美桜が行くか行かないかは麗美が決めてくれ」
 すぐに観桜パーティーだということが分かった。
 さらに聞き耳を立てる。
「うーん、どうしようかなぁ。お姉ちゃんに聞いてから判断してみる」
 美桜が行きたくないと言ったら行かされ、行きたいと言ったら留守番(るすばん)になるような麗美の意地(いじ)の悪い性格はとっくにわかっている。だからその性格を利用することにした。
 美桜の部屋に麗美が入ってきた。ノックもせずに。
「お姉ちゃん、観桜パーティがあるんだけど」
 美桜は間髪(かんぱつ)入れずに答えた。
「絶対行きたくない」
 麗美はくすくす笑いながら言った。
「お姉ちゃんそんな向きにならななくてもいいって。わかってるよ、行きたいんでしょ?」
 ここでもっと否定すれば絶対行ける。
「行きたくない!」
 麗美は深い深ーいため息をついて言った。
「だからさ、本当にお姉ちゃんってば無能だね。不吉で無能っていいとこなさすぎ。いったよね?私に口答えするなって。とりあえずお姉ちゃんは行くっていう方向でお父さんに伝えるから」
 バタン!ドアを勢いよく閉めて麗美はリビングへ戻っていった。
 やったー!麗美はひそかにガッツポーズをし、喜びを()()めた。
 喜びを抑えきれず、明日の学校で報告しようかと思っていたが、電話で報告することにした。
 桜はすぐ出た。
『美桜が電話するなんて(めずら)しいね』
 桜は何のことかピンときていない様子だ。
 麗美たちに聞こえるとまずいので、声を(ひそ)めていった。
『あのね、パーティーに行けることになったよ!』
『やったー!でも、よくあの女が許可したことね』
『行きたくないって言ったら行かしてもらえたの!そこでさ、私麗美たちと一緒にいるの嫌だし、もしできたら桜と一緒にいてもいい?』
『もちろんそのつもり!じゃあまた学校でねー』
『またねー』
 美桜は家族と行くというのに桜といれるから観桜パーティーが少しだけ楽しみになった。