帰ると、聖等が先に帰っていた。
「おかえり」
　いつも通りな感じだ。
　美桜はただ今も言わずにいきなり聖等に抱きついた。
　その行動に聖等は目を見開いた。
「どうしたんだ、美桜」
「っ聖等のことが好きなの、好きだって気づいたの。これを言ったら私たちの関係は壊れるかもしれない。でも聞くけど、何であんなことをしたの！」
「俺が何かしたのか？」
　とぼけているのか。本当に分からないのか。それが美桜にもわからなくてさらに涙が出る。
「とぼけないで！波奈さんと抱き合ったりキスしてたじゃない！」
　少しは動揺するかと思ったが、聖等はまっすぐにこちらをみて、静かに言った。
「あの時はもう日も暮れていたし、暗かったはずだ。ちゃんと見たのか？そう見えてただけだ」
「嘘だ、麗美だって言ってた、二人は昔から付き合ってるって」
「美桜は俺の言葉よりも妹の言葉を信じるのか？」
「…だって、抱き合ってるのもしっかり見えたし！」
「あれは抱き合ってるんじゃなくて波奈が転んだから支えただけだ。キスの話だってそれは美桜が実際見たことじゃなくて妹が勝手に言い出したことじゃないのか」
　図星すぎて何も言い返せなかった。
　ただ、真実じゃなかったことがうれしくて抱きついたまま泣いてしまった。
　しばらくして泣き止んだ頃、目の前に波奈がいた。
「あっ」
　驚いて声を上げると波奈は勢いよく頭を下げた。
「美桜さま、私が誤解の生まれる行動をしてしまって、大変申し訳ありませんでした！」
「いや、私が勘違いしてしまっただけなので大丈夫です。こんな遅くに呼び出してしまってすみません」
「これからは行動を慎みますので」
　すると、聖等は思い出したように付け加えた。
「天馬に言っておいてくれ。美桜の妹には厳しい処分を下すようにと」
「かしこまりました」
　そして波奈がでていくと、聖等は美桜に向き直った。
「美桜を悲しませてしまってすまない。でも、さっきの言葉は聞けてうれしかったな。もう一回言ってくれるか？」
　あれをもう一回言えというのか。
　恥ずかしくてたまらないが、ここで言わないと後悔しそうなのではっきりと言った。
「聖等のことが好きだよ」
　聖等はしばし固まり、美桜を離さないというようにきつく抱きしめた。
「愛してる。永遠(とわ)に」