「えっ嘘‥‥‥。」
 聖等が誰かと抱き合っている。
 その事実を飲み込めずに呆然としていると、後ろに麗美がいた。
「あそこにいるのはね、聖等様といとこの波奈(はな)様よ。お姉ちゃん驚いてるみたいだけど知らないの?波奈様と聖等様は昔から付き合っているのよ。それなのに(だま)されちゃってかわいそうに」
「違う!聖等はそんなことしない!」
「じゃあ、私たちに見えてるのは(まぼろし)とでも言いたいわけ?あーあー、今の見た?顔が重なったよね、キスしちゃったのかなー?騙されてるんだよお姉ちゃんは。騙されてることに気づいて元の生活に戻れば?」
 そう吐き捨てて麗美はどこかへ行ってしまった。
 聖等と波奈は、歩き出してどこかへ行こうとしていた。
 聖等が行ってしまう。
 そう思うのに、何もできなかった。