会場を出て、駐車場に行くと、すでに両親が待っていた。
「美桜、もう少し早くから来なさいね」
「ごめんなさい」
 この機嫌からすると、援助金は上げてもらえたみたいだ。
 早速車の中でその話が始まった。
「援助金、上げてもらえてよかったわね。麗美の好きな服がたくさん買えるわね」
「うん!」
 麗美も機嫌がいい。
 龍神の花嫁になれるかもしれないことをいつ話そうか迷っているうちに、あっという間に家についてしまった。
「お姉ちゃん、その服さっさと脱いで」
「はい」
「あとお母さんさ、この着物もうお姉ちゃんが着ちゃったからいろんな意味で汚れちゃったから捨てといて」
「わかったわ」
 美桜は心の中でひそかに捨てるなら欲しいなあと思ったが、こんな扱いはいつものこと。あともう少しで家を出られるかもしれないわけだし、我慢した。
 自室に戻り、いつ話そうか迷っていたが、幸いにも明日は休日。今日のことで機嫌もよさそうだし、明日話すことにした。
 しばらくしてから夕食の時間になり、下におりて行った。
 母と麗美が話しているのをぼんやりと聞きながら明日のことを考えていた。
 そのとき、気になるワードが美桜の耳に入る。
「お母さんあのね、今日あの時期都長の龍康殿聖等様がいたの。めっちゃイケメンだったなぁ。こわそうではあるけど」
「私も見たわ。なんかあの人ってすごく冷たい人らしいの。イケメンだからそれが許されるんでしょうね。もっと笑ったらいいのに」
 美桜のイメージと全然違う。麗美やお母さんは『こわそう』『冷たい』といっているが、自分たちと一緒にいたときはずっと穏やかに笑っていたはず。
 もしかしたら普段は冷たい人なのかもしれないけど、実は花嫁を見つけて舞い上がっているのかもしれない。
 そう思うと、自然と顔が明るくなった。