彼女はその様子に肩をすくめただけで、言葉は続けずに、そこに居座ったままカメラを手に取って自分が撮った写真を確認し始めた。
彼方は美術部になる前から、ずっとスケッチブックを持ち歩いていた。
好きなのかと問われて「別に」と答えるのは、まったくのその通りだったからだ。勉強をする以外にやる事もなく、いつの間にか『読書に飽きたら絵を描いて過ごす』というのが彼の最適な時間潰しになっていた。
趣味というわけではないと思う。
ただ、描いている間、なぜか奇妙な違和感にとらわれた。
一本の鉛筆が、白い画用紙の上を滑って一つの黒い線となり、それが何重にも重なり合って絵が浮かび上がる。彼方はそれを、いつも不思議に思って眺めていた。何度も、何度も、その動作を繰り返しているのに、飽きる事も『つまらない』という感情に流される事もない。
それは一体なんなのだろうと思っている間に絵は仕上がってしまう。だから、また新しく描き始めながらその正体を掴もうとする。けれど、また分からないままで終わるのだ。
彼方は美術部になる前から、ずっとスケッチブックを持ち歩いていた。
好きなのかと問われて「別に」と答えるのは、まったくのその通りだったからだ。勉強をする以外にやる事もなく、いつの間にか『読書に飽きたら絵を描いて過ごす』というのが彼の最適な時間潰しになっていた。
趣味というわけではないと思う。
ただ、描いている間、なぜか奇妙な違和感にとらわれた。
一本の鉛筆が、白い画用紙の上を滑って一つの黒い線となり、それが何重にも重なり合って絵が浮かび上がる。彼方はそれを、いつも不思議に思って眺めていた。何度も、何度も、その動作を繰り返しているのに、飽きる事も『つまらない』という感情に流される事もない。
それは一体なんなのだろうと思っている間に絵は仕上がってしまう。だから、また新しく描き始めながらその正体を掴もうとする。けれど、また分からないままで終わるのだ。