放課後。僕は惰性で入ったパソコン部の活動のために、パソコン室へと向かう。

 部活と言っても、運動部のように公式戦や練習試合があるわけでもないし、吹奏楽部や放送部のようにコンクールや大会もない。

 強いて言えば、文化祭で展示する出し物が一大イベントなのかもしれないけれど、半年近くも先のことだから別に焦る必要はない。

 本当は部活なんて入る気がなかったけれど、さすがに帰宅部のままだと内申点に関わる。

 だからどこかに所属しておこうと考えていたら、入学直後に仲良くなった茜がパソコン部に入るって言ったから、流されるように僕も入部した。

 茜は背が高くて筋肉質で、それこそバスケやバレー部といった運動部の方がお似合いの人間だ。

 それに茜は正義感が強く、誰に対しても気を配れる”良い奴”で、僕みたいに一人を好む人間はもちろん、柿谷さんのような目立つタイプの生徒とも対等に話せる珍しい人種だ。

 茜と仲良くなれたのは、入学早々に実施された実力テストで僕が学年一位を取ってからだ。

 茜は頑張ってる奴、もしくは結果を出している奴には躊躇することなく好意を向ける奴だったから、テストでトップを取った僕を見逃すわけがなかった。

 中学の時は成績も学校生活も散々だった。だから高校進学をきっかけに勉強も人間関係も一からやり直そうと、敢えて誰も選ばない少し離れた秋陽高校を選んだのだ。

 そのことを茜に話すと「そうやって変わろうと努力するのって、格好良いじゃん」って、まるで漫画の主人公が言うようなセリフを、恥ずかしがりもせずに言ってのけた。