※

 窓から差し込む初夏の陽気が、教室内にわずかに漂う緊張感を浄化する。
 
 窓際の方に目をやると、存在感の薄い青柳がほお杖をつきながら、ぼうっと外の景色を眺めていた。
 
 秋陽高校を入学してから二ヶ月が経過した。
 
 入学当初のぎこちない空気はすっかり無くなると、各々が波長の合う仲間とグループを形成し始める。ただ、全員が収まりどころの良いところに収まるわけではない。僕のように一人を好む人間は、グループ作りのイベントとは無縁だ。

 お昼休みを告げるチャイムが鳴ると、僕らは一目散に購買へと向かう。

 けれどどんなに急いで向かっても、辿り着く頃には既に争奪戦は終わっているから不思議だ。ガラの悪い連中は先生の忠告を無視して学校の向かいにあるコンビニまで買い出しに行っているけれど、生憎僕にはそこまでの勇気なんてない。

 仕方なく売れ残っていた揚げあんぱんとレジ前にあったチョコレート味のカロリーメイトを買う。

 購買を出ようとしたら、見覚えの生徒とすれ違った。

 幼馴染の橘穂花だ。

 彼女も昼食を買いに来たみたいだったけれど、既に僕が最後の一つ買ってしまっていたから申し訳なく思った。穂花は残念そうに空になったケースを眺めると、やがて何も買わずにとぼとぼと購買から出てきた。