「水曜日の一時間目から移動教室だなんて、どうしてこう、モチベが一番下がる日にこんな時間割にするんだろうな」

 「あえて教室を変えて気分も変わるようにしているんじゃない?というか、やっぱ茜もそう思ってたんだ」

 「当たり前だろ。しかも二限目が第二体育館なんて、ぜってー間に合わないだろ、これ」

 「それに一時間目は絶対に延長するからね」

 「あれどうにかなんねーかな」

 一時間目の理科の授業は理科室で行うのだけれど、担当の大橋先生は溜息が出るくらいマイペースで、しょっちゅう休み時間まで食い込む。

 しかも火曜日の二時間目は理科室から少し離れた第二体育館に移動しなければいけない。十分間という短い休み時間をさらに削られるから、一秒も無駄にはできないからいつもひやひやさせられる。

 それに体育の山田先生は、開始のチャイムと同時に現れるほど時間を徹底している。だから僕らは理科室に行く時に体操着を一緒に持って行ってたり、制服の中にジャージを着たりして、できる限りの対策をしている。

 けれど大橋先生は、そんな僕らの努力をいつも簡単に帳消しにする。そして毎回要領の悪い奴が遅れてしまうせいで、大抵火曜日の二限目は山田先生の怒鳴り声から始まる。

 しかも今日は運悪く、大橋先生の授業は大幅に延長した。

 ようやく解放された僕らは、まるでマラソンのスタートシーンのように、一斉に理科室を飛び出す。

 構うものかと必死に廊下を駆けていると、目の前に見覚えのある後ろ姿があった。そして、その女子生徒が抱えている教科書の隙間から、ひらりと一枚のプリントが落ちた。

 一瞬、拾うかどうかを躊躇した。

 落とし主は穂花だった。