無事に季節が一周した。

 秋陽高校に入学してから、クラスメイトから話しかけられる頻度が劇的に増えていた。順調に地位を確立している証拠だ。と言っても、決してこの一年間が順風満帆だったというわけではない。

 一部の気の強い人間からはガリ勉とか優等生とか、定番の陰口を叩かれることもあったし、穂花がされたように何度かノートの切れ端が入れられていたこともあった。

 ただ、その時僕はノートの切れ端を地面に投げ捨ててから、わざとみんなの前でそれを踏み潰した。

 すると隣にいた茜が「楓ってキレると意外とこえーのな」なんて、教室中に聞こえるように言ってくれたおかげで、陰湿な嫌がらせがこれ以上発展することはなかった。

 日野楓はガチギレすると何をしでかすかわからない。そういうラベルが貼れたおかげで、身を護ることに成功したのだ。

 それに、できることは何でもやった。

 去年は一年生ながら担任の先生に勧められて生徒会にも立候補したし、掛け持ちでボランティア部にも入った。全部内申点を上げるための打算的行動に過ぎないけれど。

 忙しくなるにつれて、オンラインゲームをする時間が取れなくなってきた。けれど完全に辞めることをしたくはない。息抜きも必要だと思っていたのもあるけど、一番の理由は、穂花との接点を消したくなかったからだ。

 穂花に対する嫌がらせの頻度は、夏を過ぎたあたりから明らかに増えていた。

 机の中にゴミを入れられているのはまだ可愛い方で、ひどい時にはゴミ箱からノートや教科書が見つかることもあった。

 高校生にもなって、こんなに子供じみたことをする奴がまだクラスの中にいると思うとそれだけで腹が立つ。でも、それを見て見ぬ振りする自分がそんなことを言う権利なんて無い。