憧れた時の自分の行動力には驚く。今までスポーツなんて体育の授業でしかしたことのなかったのに、僕は躊躇することなく入部届に”サッカー部”と書いて提出した。

 けれど、入部早々すぐに勢いだけで行動したことを後悔した。

 今までほとんどスポーツらしいことをしてこなかった僕は、すぐに厳しい洗礼を受けた。

 部内では既にサッカー少年団に入っていた経験者組と、中学から始めた未経験者組との実力の差がそのまま権力の差となって表れた。

 試合に負けると足を引っ張る未経験組がいつも戦犯にされ、やがて練習中にわざと顔面やお腹にボールを当てられるようにもなった。

 練習中に失くしたボールをいつも探しに行かされるのは僕達で、見つけられなければ顧問の先生にグラウンドの罰走を命じられた。
 
 連帯責任だから経験者組も走ることになり、さらに風当たりが悪くなっていった。

 ある日、部室内に入れていた鞄の中にある財布が抜き取られていた。部員全員ではなく、未経験者組のものだけ。

 犯人は生徒指導の先生達が手を焼いていた、いわゆる”不良”と呼ばれている連中だった。彼らが練習中に部室に侵入し、品定めをしながら盗みをしていた。経験者組の大半はその不良達とつるんでいたから、もちろん被害はなかった。

 理不尽だと思ったけど、思うだけ無駄だとも思った。

 結局そのことが引き金となり、僕は次第に練習に行かなくなり、中二の夏に正式に退部届を出した。

 部活を辞めてからは何もかもがどうでも良くなって、授業中は机に突っ伏して過ごしていた。そして授業が終わると、今までは部活に費やしていた時間をオンラインゲームに充てるようになっていった。

 穂花と親しくなったのは、その頃からだ。