世の中には狩る側と狩られる側が存在する。

 そんな極端に別れる世界の仕組みに気が付いてしまったのは、中学二年生の時だった。

 僕は中学に入ると、初心者の状態からサッカー部に入部した。サッカーをしてみたいと思ったきっかけは、たまたまその時にテレビで国際試合の中継が放送されていて、その中に映り込んだ一人の選手に憧れたからだった。

 相手国は素人の僕が見てもわかるくらいに危険なプレーをしていて、その試合は、何度も日本人選手がピッチに倒れていた。

 けれどただ一人、激しく足を削られたり、服を引っ張られたりしても、倒れることなくボールを蹴り続けている選手がいた。

 髪を染める選手が多い中、その選手は自分のビジュアルには全く興味が無いような五部刈りの頭。身長もメンバーの中では決して高い方ではないけれど、身体は見るからに筋肉の鎧で武装されているのがわかるほどのシルエットをしていた。

 この人のようになりたい。なぜかその時強くそう思った。