パソコン室に戻ってきても、もう目の前のことに集中する気力は湧いてこない。持ってきた資料集の内容をノートにまとめようとするけれど、ちっとも頭に入って来やしない。

 「悪い、茜。先に帰るわ」

 「気分でも悪いのか?」

 「別に。そういうのじゃない」

 「そうか。何かあったらいつでも言えよ」

 「さんきゅー」

 八つ当たりをするように返事をしたのに、茜は怒るわけでも呆れるわけでもなく、当たり前のように一言添えてくれた。

 さっき僕が穂花にかけるのを躊躇った言葉と同じだった。