四年ぶりに訪れた秋陽高校の門は、当時と比べると随分小さく感じる。何も悪いことをしているわけでもないのに、門を潜った瞬間に後ろめたいことが炙り出されるように次々と罪悪感が湧いてきた。

 学生でも教師でもない人間が卒業校の敷地内に入るのは、こんなにも勇気がいるんだ。

 教育実習先は原則として卒業した学校でなければいけないというのが気に食わなかったが、ここまで来たからにはそんなことも言っていられない。

 腹を括って母校の校門をくぐり、来賓用の玄関の方へと足を進める。

グラウンドの外周を走り込んでいる陸上部の生徒達が、追い越し際に運動部らしい端折った挨拶を投げてくれた。形式的な挨拶であることは間違いないけれど、純粋な掛け声のおかげで、僕の警戒心は少しだけ和らぐ。

 けれど、すぐに正面から来た女子生徒に、すれ違いざまに睨みつけられて現実に戻る。部外者に疑念の目を向けるあの子の反応は至って自然なことだと思う。

 誰かに「お前は本気で目指しているのか」なんて聞かれたら、きっと何も言い返せない。結局僕はあの時の自分を許したいがために、罪滅ぼしという消極的理由で教師の道を歩もうとしている。

 それでも、どんな動機であろうとぶれない目標を見つけられたのは、目標が無い人間と比べて遥かに幸せなことなんだろうとは思う。

 人生を変えるほど悩み苦しんだあの時期を懐かしく思えるようになるには、まだしばらく時間がかかりそうだけれど。

 来賓用の玄関から校舎の中へと入る。

 持ってきたスリッパに履き替え、受付窓口へと向かう。懐かしい校舎の匂いを感じながら窓口に備え付けられている呼び鈴を鳴らすと、事務員の有野さんがガラス越しにきつめの視線を向けてきた。