複雑そうな表情を浮かべる隆智に闇夜姫は視線を向けた後、自分の手元に目線を落とす。

「守護代から彼の話を聞いたときに、私は嬉しいと思ったのです。
斎王は歴史の中で短い間というのに未だ形式的になったとはいえ未だに引き継がれているものの、私の立場は未だ正式に続いているのに存在が完全に消えました。

そのような中を探し出してくれた、宵闇師含め私達を理解してくれるような気がして嬉しかったのです」

まだ若い姫の横顔があまりにも儚く見えて、隆智は奥歯を噛みしめる。
誰に知られない、大きな事情があるとはいえ存在が気付かれないことはまだ若い姫にはきっと寂しい。

わかっているが、彼女の仲間である自分たちではそこを満たすことはどうしても出来ないのだと隆智は痛感した。

だが恐ろしい。
自らを知って欲しいと願う純粋な姫と、あくまで研究対象としてしか姫を見ていないあの男。

夢を見ているかのような我らの姫が、あの男に傷つけられるのではと不安に駆られる。

「姫、おしゃべりはまた後日に。移動致しましょう」

隆智は話題を無理矢理終わらせ立ち上がると、姫に手を差し伸べる。
闇夜姫はそんなことを言った本意をわかったかのように頷いて、その手を取って立ち上がった。

「大丈夫だから。そんな顔しないで。ね?」

「・・・・・・悪い」

安心させるように闇夜姫が砕けた口調で話しかければ、隆智は情け無さそうな顔で答える。

自分の方が年上なのに、どうしてこうも彼女の前だと子供になってしまうのはまだまだ未熟な証拠。
それがわかった上でなお、守りたい相手だからこそ自分は努力し続けられる。

自分の手よりはるかに小さな手を壊さないように隆智は闇夜姫の手を取って、まだ外の光は差し込まない暗い廊下を燭台を持ちながら進んだ。