翌日、私は衣装合わせのため婚礼衣装の専門店にいた。

「梨華、このドレスも素敵ね。せっかくだから着せてもらったらどう?」

一緒に来た母が目を輝かせて、一番近くに飾られてあるマーメイドラインのドレスを指差しながら私の肩を叩いた。

「もうドレスは決まっているんだから大丈夫よ」

「そう?毎回来るたびに新しいものが増えていくのに梨華ってばパンフレットの中で決めちゃったから面白くなくて……」

一人娘の結婚式に気合が入るのは当然だ。しかし、私の心は少しも躍らない。
そのため、一度もドレスの現物を見ずに、店のパンフレットの表紙を飾っていたドレスがいいと主張したのだ。お色直しのドレスも同じく。

「あまり興味がないみたいでつまらないわ」

それは私もまったく同じ気持ちだ。でも母に沈んだ顔をさせたいわけじゃない。心で“ごめんね”と言った。

「今泉様、ドレスのご用意ができました。こちらへどうぞ」

髪をきっちりとお団子に結った女性スタッフの加賀(かが)さんの声を聞いた私は、掛けていた椅子から立ち上がり彼女の後に続いた。