入学式が終わり、教室に戻ってきた私達、さっそく委員会決めを行った。
 学級委員長、副委員長をはじめ、大変そうな委員会は人気がない。
 そして、誰と一緒にやりたいとか、やりたくないとか大騒ぎになる。この時間が私は昔から嫌いだ。

 始まりは小学六年生の春、当時仲良しだった瑠美ちゃんとクラスが別になってしまい、落胆していた。
 そして、追い討ちをかけるように委員会決めが始まった。まだ、クラスで気軽に話せる子が居なかった私は孤立した。
 図書委員に興味はあったが、他にも希望している子達が居たので、波風立てないように諦めた。
 結局、最後まで残った環境美化委員として、花壇の手入れや園庭、校舎の掃除など一年間頑張った。

 人が集まれば、色々な考え方の人が居るのは当然だ。
 「皆違って良い」って誰かは言ってたけど、人と違うことを言ったり、したりすることが私は苦手だ。
 目立つとその分、誰かに何かを言われたり、思われたりする。それはプラスのことだけじゃなく、むしろマイナスのことの方が多いような気がする。
 だから私は、集団の中で目立ってしまうことが嫌いだ。

 それなのに……、何でこうなった?

 私は今、相澤くんと共に皆の前に立っている。そしてチョークを片手に持ちながら、相澤くんを斜め後ろから見守っているのだ。

 遡ること数分前のこと。わりとスムーズに委員会決めは進み、不人気だった学級委員長、副委員長が最後まで残った。
 そして、ウトウトしていた相澤くんと、しっかり起きていたのに、手を挙げる勇気がなかった私だけが残ったのだ。私は、相澤くんに必死でお願いをした。

「お願い、相澤くん! 私に学級委員長なんて務まらないよ。緊張しちゃうし、口下手だし、いつも自信ないし」
「えー、学級委員長とかめんどい。理沙ちゃんやってよ」
「そこを何とかお願いします! 相澤くんは表舞台で話してくれれば良いよ。あとの仕事は私がやるから……。お願いします」

 泣きそうに話す私を見て、彼は少し考えて提案してきた。

「うーん、じゃあさ、今度俺と付き合ってくれる?」
「えっ、付き合う⁉︎」
「そう! 一緒に来てほしい所があるんだけど」
「そっちの付き合うか! 良いです、いくらでも付き合いますから、お願いします」
「契約成立だ。忘れないでね」

 彼はニヤッと不敵な笑みを浮かべ、立ち上がった。そして、教卓に向かって歩き始めた。

「えーと、今日からこのクラスの長になったんで、よろしくお願いしまーす。楽しい高校生活にできるよう、頑張ります」

 相澤くんが挨拶をしたので、私も挨拶せねば、と思い教卓に向かった。すると、彼が話を続けた。

「そして副委員長は、石田理沙ちゃんだよ。人見知りしちゃうけど優しいから、理沙ちゃんって呼んでね」

 と、代わりに紹介してくれた。私が相澤くんを見つめたまま呆然としていると、彼が小声で言った。

「ほら『よろしくお願いします』ぐらいは自分で良いなよ」
「……! よっ、よろしくお願いします」

 私がお辞儀をすると、皆から拍手をされた。

 そんな訳で、相澤くんと私は学級委員長と副委員長、という関係になった。
 これが後々とんでもないトラブルを起こすとは、まだ知る由もなかったのだ。