高校に入学して1ヶ月、もうすぐ学級委員としての仕事が忙しくなる。何故なら、来月には体育祭があるから。体育祭実行委員と協力して、クラスをまとめないといけない。

 荷が重いなぁ。きっと彼は、そんなこと考えてもいないだろう。

 そう思いながら目の前にある背中を見つめる。学級委員長である相澤くんは、授業中にもかかわらず、机に突っ伏して眠っている。

 あの人、最前列なのにすごい堂々と寝ている。私にはそんな勇気ないから、ある意味すごいなぁ。

 何度か先生に起こされるも、すぐ眠ってしまう有様だ。

 モデルの仕事でお疲れなのかな?

 授業の最後、先生が一言呟いた。

「今月中旬にはテストがあるから、コツコツ復習しておいてね」

 教室中がザワつき始める。相澤くんはそんな騒ぎにも気付くことなく、ぐっすり眠っている。
 授業終了のチャイムが鳴ると、それが目覚ましかのようにムクッと起きて、背伸びをする。そして大きなあくびをしながら呟く。

「はぁーあ、眠い」
「『眠い』って……。ほぼずっと寝てたけどね。あんなに堂々と寝てられるなんて、逆にすごいと思います」

 私は苦笑いしながらツッコミを入れた。

「あの先生の声、子守唄みたいじゃない⁉︎ 俺からすれば、皆よく起きてられるなぁって感心するよ!」

 笑顔で話す相澤くんを、私は呆れ顔で見つめた。そして椅子に腰掛けたまま後ろを向いて、凛ちゃんに話しかける。

「今月の中旬にテストって言ってたよね⁉︎ どうしよう、凛ちゃん。私、全然できる気がしないよ」
「私もヤバい。どうしよう……」

 そこへ相澤くんが混ざってきて、自信満々に言うのだった。

「そう言うことなら、俺に任せて!」

 私達は一瞬だけ相澤くんを見たが、何も言わずにまた二人で話し始めた。

「ねぇ、凛ちゃん。近々空いてる日あるかな? 良ければ一緒に勉強しない?」
「そうだね、私も一緒に勉強したいと思ってた」

 そこへ、また彼が乱入してきた。

「俺も一緒にやる! ついでに佐藤もな!」
「えっ⁉︎」

 相澤くんの言葉を聞いて、隣に居た佐藤くんも、私達も驚いた。

「良いじゃん、皆でやった方が楽しいし!」

 なんと強引な人だ。でも何だか青春してるって感じ。楽しそう。

「そうだね、すごい楽しそう。もし嫌じゃなければ、皆で勉強しよう⁉︎」

 佐藤くんと凛ちゃんは、しばらく考えていた。そして二人とも参加することになった。

「それで相澤くん『俺に任せて!』って言ってたけど……何かいい方法あるの?」

 私が問いかけると、彼はいつものように自信たっぷりの笑みを浮かべて言った。

「とっておきの秘密兵器があるよ! それが何かは、当日のお楽しみということで」

 そう言って、詳細を教えてくれなかった。