入居初日、既に車と共に沖縄入りを果たしていた萬狩は、前日に郵送で届けられた鍵を持って、そこに同封されていた地図を片手に、新しい自分の家へと向かった。

 地図を見ながら、サトウキビ畑の広大な土地を真っ直ぐ抜け、ひび割れたアスファルトの細い坂道を上る。伸び放題になった雑草や、乱立して生い茂る木々が車道をより狭めていたが、この先は既に私有地となっているため、対向からの車の心配はなかった。

 高台にある開けた土地に差しかかると、路面はアスファルトから砂利に変わった。

 風化してやや丸みを帯びた石垣の塀の中に入ってすぐの場所に、雑草が生えないよう砂利が敷かれた駐車場が広がっていた。六台は停められそうなその場所に、萬狩は自分のセダンを停めた。

 駐車場から続く先には庭が開けていた。そこは学校のグラウンドほどの広さがあり、五月の厚い日差しに整えられた青々とした芝生が目に眩しかった。一軒家は山の上に建てられているので、広い敷地の周りを太く立派な木々が取り囲んでいる。

 原っぱと化しそうな広い庭の手入れについては、必要なら専門家を呼んで手入れを頼む必要がありそうだ。家庭菜園が出来そうなスペースが小さく作られてはいたが、萬狩は、家庭菜園の経験はなかったし、今後もやる予定がなかった。

 平たくされた敷地の中心地に構えられていたのは、写真で見たよりも立派な一階建ての洋館造りの一軒家だった。

 コンクリート造りのその物件は、壁もきちんと白いペンキでコーティングされており、長い築年数を感じさせないほどに小奇麗だった。玄関の扉は潮風によって錆かかってはいるらしく、鍵穴に鍵を差し込んで回す際に少しだけ、ギィッと耳障りな音を立てた。