二巻は店主が子孫に代わっているが、根っこの設定に変化はない。人物の感情とその変化に感情移入して楽しむもの。

 このシリーズの魅力は、あまり見かけない二人称で書かれていることだろう。各章のメインとなる一章限りの人物は読者であり、本の外の世界から読者に向かって店主が語りかける。不思議と読者は人物に成り代わった気分にさせられる。

 話題性はそれなりにあるがメディアミックス化はされておらず、たまたま手にとった読者の多くが気に入ったことで、シリーズ化しているといったところか。


(ブラック企業、ホームレス、リストラ、失明)


 どのような人生を歩めば、地獄のような日々を過ごす人々に語りかける言葉を選べるのか。指で突けば粉々に砕けるガラスに息を吹きかけるようなものだ。

 本那水城という人物が書く物語に興味を持ち、この作者が書いた他の作品、「万人の幼稚園」「廃湖」「千羽鶴の行く先」等、いくつか学校の図書館で借りてみたことがある。「万人の幼稚園」「廃湖」共に好みとは違っていて、作者に興味を持つほどの衝撃を感じる作品ではなかった。「千羽鶴の行く先」は読まずに返却した。

 先にあの二冊を読んでいれば期待を無くし、数世シリーズにも手をつけていなかっただろう。


 最初に読んだ本那水城の本が、数世シリーズでよかった。

 数世シリーズに出会えてよかった。


(そして、家庭不和……)


 一ページ目から順に斜め読みをし、家庭不和が描かれた章をじっくりと縦読みする。

 まぶたが重くのしかかり、文字を追っていた目はどこを見ているのか。脳は読む行為を次第に忘れ、本を持ち上げていた手は力を無くす。鞄の上に身を任せた。

 持っていた本は……本は……。