すると突然、ドアをノックする音が聞こえた。ほまれが「はーい」と座ったまま言うと、そっとドアを開けて一人の女子生徒が入ってきた。どこか怯えた様子の彼女は震えた声で尋ねる。
「せ、生徒会の方に相談があってきました……今、お時間よろしいでしょうか?」
「もちろん。こちらにどうぞ。トイくんの隣でいいかな? 半ちゃん、美味しい紅茶をお願いね」
ほまれが誘導し、女子生徒を糸魚川の隣に座らせる。ずっと抱きかかえたままの鞄には同じ絵柄の手紙が大量に詰め込まれているのが見えた。
「それって……」
「トイくん、それは彼女が話すべきことだよ」
いつになく真剣な彼女の目が、糸魚川の言葉を遮った。そしてずれたボストン眼鏡をかけ直して、女子生徒に優しく話しかける。
「よくここに来てくれたね。ありがとう、もう大丈夫だよ」
「え……?」
ああ、そうだった。――糸魚川は口を閉ざした。
つい最近実感したばかりだったのに、大事なことをすっかり失念していた。困っている生徒を放っておけず、生徒会の活動の名目として救い、応援する彼女は良くも悪くも真っ直ぐなのだと。
「私は生徒会長の轟木ほまれ。生徒の有意義な学校生活を応援するために、協力は惜しまないよ」
【 轟木ほまれは曲がれない。 】 <了>
「せ、生徒会の方に相談があってきました……今、お時間よろしいでしょうか?」
「もちろん。こちらにどうぞ。トイくんの隣でいいかな? 半ちゃん、美味しい紅茶をお願いね」
ほまれが誘導し、女子生徒を糸魚川の隣に座らせる。ずっと抱きかかえたままの鞄には同じ絵柄の手紙が大量に詰め込まれているのが見えた。
「それって……」
「トイくん、それは彼女が話すべきことだよ」
いつになく真剣な彼女の目が、糸魚川の言葉を遮った。そしてずれたボストン眼鏡をかけ直して、女子生徒に優しく話しかける。
「よくここに来てくれたね。ありがとう、もう大丈夫だよ」
「え……?」
ああ、そうだった。――糸魚川は口を閉ざした。
つい最近実感したばかりだったのに、大事なことをすっかり失念していた。困っている生徒を放っておけず、生徒会の活動の名目として救い、応援する彼女は良くも悪くも真っ直ぐなのだと。
「私は生徒会長の轟木ほまれ。生徒の有意義な学校生活を応援するために、協力は惜しまないよ」
【 轟木ほまれは曲がれない。 】 <了>