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 ――時は遡り、糸魚川が本当のことを打ち解けたその後。二人きりになった夕日が差し込む生徒会室で、ほまれが半井に背を向けて言った。

「半ちゃん、私、許せない」
「それは、垣田のことか?」
「家族は今までも、そしてこれからも先を支えてくれる大切な存在だから。それを知りもせず、蔑ろにする人が、こんなに身近にいるなんて信じたくなかった」
「それはそうだろうが、お前がそこまで熱くならなくてもいいだろ。所詮、俺たちは赤の他人だ」

「他人だからこそ、壊していけないんだよ。私はね、たとえ目に見えなくても見守ってくれていると思うの。なかには心底嫌いで一生打ち解けられない家族もいる。離れてよかったと清々しく思う人もいる。でも人は、また新しく人との関わりを求めるんだよ。人は縁を紡ぎ、切り離してはまた紡ぐ。その繰り返しなのだから」

「ほまれ……」
「特にトイくんは、本来の家族も今の家族も大切にしている。それを簡単に手放すことなんてできないよ。……なにより、彼の高校生活はまだ始まったばかりなんだよ? こんなやりきれない気持ちで三年間を過ごすなんて、絶対にさせない」
「……それはお前の意地か? それとも生徒会長として?」
「どう受け取ってもらっても構わない。ただ私は、彼にそんな高校生活を送ってほしくない」

 壁に空けた穴を見つめ、ヒリヒリと痛む右手をぎゅっと握りながら絞り出すように呟いた。

「私が、許さない」