「ああ、そうだよ」

 糸魚川の叫びに、半井が顔を上げた。額には前髪をかき上げた際に指についた泥がついていた。

「応援するだけで、あとは生徒次第――それが生徒会のモットーだ。でもほまれは、お前が帰った直後に生徒会室の壁に穴を空けたんだ。拳一つ分の、大きな穴を」
「穴……? それとどういう関係が……?」
「お前が初めて生徒会室に来た日、ほまれはジャージを着ていただろ」

 半井に言われて糸魚川はハッとした。
 訪れたあの日――ほまれは制服のジャケットはクリーニング中(・・・・・・・)だと言っていた。そしてその日の昼休みには、垣田と上級生がこの校舎裏で喧嘩をしている(・・・・・・・)

「まさか……」
「喧嘩の最中に上級生の一人が近くの薪をぶん投げたんだよ。それが仲裁に入ったほまれの背中に当たって、ジャケットは泥まみれ。俺が来た時には垣田たちは逃げた後だったけど、昨日のお前の話を聞いて全てが繋がったんだろうな」