二人に連行される形でやってきたのは、本校舎の裏にある用務員が利用する倉庫だった。学校の花壇に使用されている肥料や木材など、学校の周辺を整備する資材や道具が保管されている。倉庫のすぐ横には使われなくなったレンガやコンクリートブロック、非常時の土嚢が外に置かれており、もはや何十年も前に使用を禁止され、ただの置物となってしまった焼却炉が佇んでいた。
「ここはね、授業に飽きた上級生の悪い子が集まってサボっている有名な隠れスポットなんだよ!」
「……いやいや、そんなパワースポットみたいな説明しないでください。明らかに不穏でしょ」
「実際にパワースポットだ。ここに来ると絡まれるって有名だからな」
ご利益を得られないどころか怪我をさせられるなんて。不本意とはいえ、酷いパワースポットができてしまったものだ。
ほまれは糸魚川から手を離すと、長い黒髪を一つにまとめて括ってお団子にする。そしていきなり屈んだかと思えば、地面に這いつくばるように焼却炉の周辺を探し始めた。
「と、轟木先輩? そんなことしたら制服が汚れますよ」
いくらここ数日雨が降っていないとはいえ、校舎裏は日陰となって湿気で地面がぬかるんでいる。それでもほまれは探す手を止めない。
「轟木先輩!」
「無駄だ、糸魚川。ああなったら誰も止められない」
そう言って半井も倉庫の壁に沿って積み重ねられた土嚢を一つずつどかしていく。
「半井先輩もなにしてるんですか? なんで……」
糸魚川には理解できなかった。探し方の助言という無茶な相談をしただけで、どうしてここまで関わってくるのか。すでに答えはもらった。あとは一人でなんとかできる。――それなのになぜ、二人が制服を汚し、授業を放ったらしにしてまで他人の失せ物を探すのか。いくら生徒会が有意義な学校生活を送れるように尽力しているとはいえ、ここまでする必要はない。
「生徒会は、応援するだけって言ってたじゃないですか!」