「学校の裏に焼却炉があるだろ。そこで上級生に絡まれて、転んだ拍子に落としたんだよ。探したけど見つからなかったから諦めたんだ。でも早く返そうとはしてたんだぜ? 家族写真まで入れるほど大事だってことくらい、俺にだってわかるよ! 一ヵ月経ったらしれっと机に入れておくつもりだったんだ。でもその前にあんなことになって……悪かったと思ってる。でもこれで本当のことを話したら、もっと悪くなると思って……。でも落としちまったもんはしょうがないだろ!?」

 半べそをかいてようやく自白した垣田の言葉に、糸魚川は心底呆れた。
 あれだけ言い逃れしようとした結果、こんな幼稚な説明をされて誰が納得できようか。半井に殴り掛かった自分を止めてもらって良かったとすら思う。こんな奴に振るう拳が勿体無い。

「惨めだな。自白するくらいなら、最後まで悪役でいればよかったのに」

 半井が吐き捨てるように垣田に言うと、自分は悪くないと更に泣きわめいた。ヘイトスピーチを聞いた多くの生徒が冷めた目で垣田を見ている。もはや覆すのは難しいだろう。それを横目に、半井は糸魚川にチェーンを渡した。馴染みのある壊れた留め具を指でそっとなぞる。

「……間違いありません。僕のです」
「そうか。あとはロケットだな」
「垣田くん、焼却炉ってレンガや土嚢が置かれてるところだよね?」

 ほまれが垣田に問い詰めると、先程の笑みに恐ろしさを感じたのか、首を何度も縦に振って答えた。

「半ちゃん、行ってみようよ。松田先生、この場はお任せします。それとトイくんは借りていきますね」
「え?」

 まさかの指名に思わず声が出ると、半井とほまれが両腕を掴んで教室を出ていこうとする。

「お、おい、轟木、どこに行く気だ? 授業は?」 
「嫌だなぁ先生。そんなの決まってるじゃないですか」
 茶目っ気全開でウィンクを投げるほまれに、糸魚川は嫌な予感がした。