ほまれが次々に繰り出す言葉に、垣田の顔色は次第に真っ青になっていく。一つ一つに思い当たる節があるのか、それとも自分の行いが本当に真っ当だと考えていたからなのか。彼女に言い返す言葉が見当たらず、ただただ曖昧に口を開いては身を縮こまらせた。

 良くも悪くも真っ直ぐな、ほまれの演説は続く。

「同じ教室にいる生徒でも、卒業まで挨拶程度で終わる関係の同級生は少なくない。それでも仲良くしたいと思うのなら、多くの人が身近なことを引き合いにして距離を詰める方法を試していけばいい。でも君はその方法を間違えた。私利私欲のために動く人間には誰もついてこない」
「ふざけんな、俺がアイツごときに劣るはずがない!」
「劣るとは言っていないさ。しいていえば、彼は君よりもいろんなものを大切に想っている。それは君が一番、わかっているんじゃないかな」
「…………っ」

 これ以上言葉が出てこなかったのか、垣田は肩を震わせながら黙ってほまれを睨みつける。取り巻きたちは野次を飛ばそうと口を開いたが、彼女の威圧感に圧されて動けない。勝ち目がないと悟ったのか、ついに垣田は松田先生の方を向いて縋った。

「ち、ちがう! アイツは家族なんて大事にしてるもんか! 家出してるんだから……先生、信じて!」
「垣田、糸魚川は家出なんかしていないよ」
「……え?」