「は……? もらってますけど、それがなにか? 俺に口で勝てないからって――」
「君の話は破綻しているんだよ。手帳を五ページほど捲った第三条、服装についての項目はこうだ。『基本学校指定の制服を着用する。非常事態が起きた場合のみ申請を出せばジャージの着用を許可する。また、最低限のマナーを守ったアクセサリーは身に付けても良い。』……これによれば、トイくんは校則違反をしていないことになる。ペンダントがダメなら、君のピアスやポロシャツも違反だからね」
「で、でも男でペンダントってダサくないですか? 中に家族の写真が入っていたんですよ!」
「私は人のパーソナルスペースを踏み荒らし、鼻で嗤う君の方が何十倍もダサいと思うよ」
「はぁ!?」
「君のしていることは、まるで好きな子に振り向いてもらいたい一心で悪戯してしまう小学生そのものだね。何でもこなし、バスケ部の次期エースとまで噂されている君は、期待の星と言っても過言ではないだろう。そんな君には周りの人が向けり期待の眼差しがスポットライトにでも見えたのかもしれない。だからこそ見向きもしなかった彼が気に食わなかった。……でも、彼は君に何をした? 彼のせいで君は何を失った? ――何もないじゃないか。彼がこの一ヵ月、毎日のように校内を探しまわっていたことも、それがどれだけ大切なものだったことも、君は全部知っていたはずだよ」
「そ、それは……」
「彼の興味を自分に向けるために、傷つけることだけは絶対してはいけない。――それがどうして分からない? 叩けば簡単に壊れるのは、物だけじゃないんだよ!」