多くの新入生を迎えたある高校の入学式は、代表として登壇した少女の発言によって、新年度早々に生徒会長の再選挙が行われる異例の事態となった。

 現生徒会長は昨年度の副会長から繰り上げられて当選した経緯があり、在校生からの信頼が厚い。忠実な演説を終えて降壇する際、余裕の笑みを浮かべるほど勝利を確信していた。

 それに対し、少女の演説は理想像でしかないにも関わらず、活き活きとした発言力と緻密な具体策に興味をそそられた生徒が続出した。

 新入生でここまで堂々と話せるのはなかなかいないと、教師陣も驚きを隠せない。どちらが勝ってもおかしくはない演説に、誰もが高く評価した。

 しかし、現生徒会長は今年で最後の年だ。三年間という月日を生徒会に捧げたことには価値がある。だからこそ続投させるべきだという声も当然上がっていた。

 ――が、その矢先、現生徒会長があるトラブルに加担していたことが発覚し、三ヶ月の謹慎処分が下されてしまった。

 学校の顔でもある生徒会長が謹慎などあってはならないという学校側の意向で、無条件で少女が新しい生徒会長へ任命されることとなる。

 一連の流れに対し、「新入生が仕掛けた罠だ」「生徒会長は嵌められたか」と多くの憶測と批判の声が上がったものの、当選した一ヵ月後には何事も無かったかのように消えていた。

 それもそのはず、彼女は演説で公言した通り、たった一ヵ月で授業環境を整え、多くの部活動が全国大会に進める強豪校へと導く快挙を遂げたのだ。これには彼女を認めざる得ない状況となり、誰もが口を閉ざしていくしかなかった。

 これを機に成果を上げ続けていった彼女は、三年連続で生徒会長に選ばれることになる。

 彼女の名前は、(とどろ)()ほまれ。おそらく学校一の変わり者だ。