「大丈夫、俺も会社にいた方が楽だし、アパートよりマンションの方がセキュリティも安心だからな」

静香はやっと納得してくれた。

マンションに戻ると、初めて来たような態度で、中々記憶の回復には時間がかかると覚悟した。

それから俺は会社に寝泊まりする事になった。

毎日、静香と翔太に会えないのは寂しいが、静香は俺と一緒にいる事に
緊張するみたいだ。

翔太とはすぐに打ち解けられた。

俺は荷物を持って会社に向かう時、翔太に「ママを頼んだぞ」と言って
静香を託した。

「大丈夫だよ」

翔太は翔太なりに色々思っているだろうに、物分かりの良い子で助かっている。

そんなある日、会社で大きな契約の話が持ち上がった。

取引先の会社は大手のホテル経営の会社だ。

この契約が成功すれば、真壁不動産は大口の顧客を手にすることが出来る。

俺は毎日徹夜状態が続いた。

新しい秘書はよく働いてくれる女性だ。

金山百合絵、二十八歳。

俺が毎日カップ麺で食事を済ませていると、まるで母親のように