突然、理人が手を差し出しながら言った。
「お前のスマホ貸せ」
そう言われ、千明は疑問に思いながらも理人にスマホを渡す。
「俺が連絡したら、すぐに来い」
そう言いながら、自分の連絡先を登録した後に、千明にスマホを返す理人。
「そんなことに言われても、すぐに行けないことだってあるよ!」
千明は、差し出されたスマホを受け取りながら、理人に言い返す。
「じゃあ、5分待ってやるよ。それまでに来れなければ、罰を与える」
「だから! 5分でも行けない時は行けないってば‼︎」
怒り口調で千明が反抗する。
「俺が、お前に5分も時間をやるって言ってんだから、それで満足しろよ! どんだけ図々しいんだ」
理人も怒り口調で言い返す。
「満足なんて、できるわけないでしょ! だいたい何でそんなに横柄なの。ムカつくわ〜」
「それはこっちのセリフだよ! 奴隷のくせに偉そうにしやがって。腹立つ〜」
お互い苛立ちが募り、そっぽを向く。
そこへ、1人の女子生徒が2人の近くを通りかかり、理人に向かって、笑顔で話しかけてきた。
「あら、りっくん! ごきげんよう」
とても小柄で、お人形のような可愛らしい女子生徒の仕草を見て、千明はピンッときた。
この子……、令嬢だ。なんて、清楚で可愛い子なんだろう。でもあれ? 今「りっくん」って呼んだ⁉︎ こいつと仲良いのかな?
そう思いながら、千明は彼女を見つめた。
すると、その視線に気がついた彼女が、千明に会釈をする。すかさず千明も彼女に会釈をした。
「あ〜、綾音か。こいつ、今日から俺の奴隷になったから、よろしくな」
理人がそういうと、彼女が千明に近づき挨拶をする。
「はじめまして! 私は本条綾音です。彼とは長い付き合いなので、何かお困りのことがあれば、力になりますよ!」
ニコッと微笑む綾音に、千明は緊張しながら挨拶をする。
「私は、橘千明です。転入したばかりで何も分からないので、色々教えてもらえると嬉しいです!」
千明の話を聞いて、すかさず理人が言うのだった。
「そう! こいつバカだから、本当に何も分かんねぇんだよ」
「うるさい! あんたは黙ってて」
「はぁ? ご主人様に向かって、そんな口きいていいと思ってんのかよ⁉︎」
「思ってますけど、それが何か?」
いがみ合う2人を見て、綾音がクスッと笑いながら言う。
「2人は、もう既にとっても仲良しね! これなら心配いらないわ」
「仲良くなんかない!」
千明と理人が口を揃えて言う。
「ほら、息ぴったり!」
ほんわかマイペースの綾音に、呆れてため息をつく理人。それを見た千明も、言い合いをする気がなくなるのだった──。
「あ〜、バカバカしい。あとは綾音、頼んだぞ」
そう話すと、理人はどこかへ立ち去っていくのだった──。