──そんな戯れ合う2人姿を、こっそり見守る綾音。


 「上手くいったみたい。あとは……」


 綾音がそう言うと、背後から声が聞こえてきた。


 「綾音ちゃん、見せたいものって何?」
 

 綾音に呼ばれて現れたのは、暁人だった。


 「あっくんには受け入れ難い現実かも知れないけど、ちゃんと受け入れるべきだと思うから……」


 綾音はそう言うと、千明と理人が戯れ合う姿を見せた。


 暁人はすぐに目を逸らした。


 「りっくんと居る時の千明ちゃん、すごく幸せそうな顔してる。千明ちゃんの気持ち……、本当は、あっくんも分かってるんでしょ? 千明ちゃんの為だけじゃなくて、あっくん自身の為にも彼女を手放してあげてほしいの」


 綾音がそう言うと、暁人が聞き返す。


 「僕の為だって? 全然意味が分からないよ」


 珍しく暁人が声を荒げる。


 「りっくんを憎んでても、あっくんの為にならないってことよ!」


 つられて、いつも冷静な綾音も少し興奮したように話す。
 
 
 するとそこに──、千明と理人が現れた。


 「誰かの声が聞こえると思ったら……、綾音ちゃん、暁人くんも……」


 険悪な雰囲気の綾音と暁人を見て、千明が心配そうに言う。


 綾音が慌てて千明に謝った。


 「ごめん、千明ちゃん。あっくんと話してたら、少し熱くなっちゃって……」


 理人が暁人に向かって真剣な顔で言う。


 「暁人、少し話がある」


 「僕は、お前と話すことなんてない! 千明ちゃん、行こう」


 暁人はそう言うと、千明の手を強引に握り、その場を立ち去ろうとする。


 すかさず理人も千明の手を握って言う。


 「行くな……」


 悲しげな表情で、千明だけを真っ直ぐ見つめる理人。千明も切なそうな顔を見せるが、決心したように理人に言う。


 「私、暁人くんとちゃんと話がしたい。だからお願い、手を離して」


 理人は手を握ったままジッと千明を見つめる。そして千明も理人を見つめる。


 ──理人は、しぶしぶ千明の手を放した。
立ち去る2人を悲しげな表情で見つめる理人。それを見て、綾音が余裕そうな顔で言う。


 「りっくんのそんな顔、初めて見た。恋ですね。どんなに美人が集まっても、たった1人、大事に想う子がそばに居ないと切ないよね。でも大丈夫! 千明ちゃんの頭の中は、りっくんでいっぱいだから」


 綾音の言葉を聞いて、理人がクスッと笑いながら言うのだった。


 「綾音には、敵わないよ」