──暁人の奴隷になって1週間。
理人との主従関係が解消されたという噂は、あっという間に学園中に広まった。そしてイジメはなくなり、千明は穏やかな生活を送っていた。
平穏だ。これがずっと私が願っていた生活……。
あまり表情の優れない千明が、廊下をとぼとぼ歩く。すると、遠くから理人と美女が仲良さげに歩いてくる。
非常に気まずい。でも、ここで隠れたら逃げてるみたいだし……。なんだよ、デレデレしちゃってさ。私にはあんな顔見せなかったくせに……。
そんなことを思いながら、うつむいて歩く千明。
すると、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あら、りっくんたら……。千明ちゃんが見てる前で、あんな風に他の子と仲良くしなくてもいいのにね。まるで、千明ちゃんに嫉妬してもらいたいみたい。そしてあの子も悪い子。千明ちゃんのりっくんなんだから、奪っちゃいけないのに」
千明が振り返ると、そこには少し怒った顔で理人と美女を見つめる綾音が立っていた。
「彩音ちゃん、久しぶり! 同じ学園なのに全然会えないから心配してたよ。──もう、理人とは何の関係もないから。」
千明は興奮のあまり、綾音に抱きついた。綾音は千明の頭を撫でながら、10日ほど海外に行っており、学園を留守にしていたと話した。そして千明の発言の意味を問い詰める。
「えっ、待って! 『何の関係もない』ってどういうことなの? あれっ、ブレスレットが変わってる。私が居ない間に一体、何があったの⁉︎」
2人がそんな会話をしていると、理人と美女が近くを通りかかった。すれ違いざまに、美女が千明を見てニコッと笑う。理人は千明に目も合わせず、ただ真っ直ぐ前だけ見て歩いて行く。
千明の表情は、より一層暗くなった。それを見かねた綾音が、カフェに誘った。