──翌朝、千明が学園に行くと、生徒達が大騒ぎしている。そして、千明は周りからの冷たい視線を感じた。


 何だろ? いつにも増して皆からの冷たい視線……。あー、最悪。


 とぼとぼ歩く千明の目の前に、女子数人が立ちはだかる。驚く千明をよそ目に、女子達の1人が口を開く。


 「ちょっと! 理人様との主従関係を解消したって本当?」


 千明は愕然とした。


 そんな千明に構わず、女子達が次々と話し始めた。


 「昨日、あなたと理人様のやりとりを見た人が居るのよ! もう、どう見ても主従関係破綻してるって言ってたわ」

 「そうよねぇ、あなたみたいな子が理人様と釣り合うわけないもの。近くに居たら理人様が可哀想よ」

 「そのブレスレットは、私たちが理人様に返してあげるから、さっさと渡しなさい」


 そう言うと、女子達が千明を取り囲み、無理矢理ブレスレットを取り外そうとする。必死に抵抗する千明。


 「やだっ……、やめてよ!」


 女子達の腕をなんとか振り払い、走って逃げる千明。そして、懸命に追いかける女子達。



 ──その光景を、理事長室の大きな窓から見下ろす理事長と石崎。


 「あら〜、朝から追いかけっこかしら? 元気ねぇ」


 呑気に話す理事長に、呆れ顔の石崎が言う。


 「私には、そのような穏やかなものには見えませんけど。……助けに入らなくてよいのですか?」


 「あら、そう? 若い時は色々経験しないとねぇ〜。大丈夫よ、私の可愛い姪っ子は強いもの。こういう時は、優しく見守っていればいいのよ」


 そう言って、仕事に取り掛かる理事長。そして、そんな彼女を黙って見つめる石崎であった。