「で、でも、お金がなくて」


「はぁ? お前が私のジュースこぼしたんだろうが!」


派手な髪色をした女子生徒はアンナだ。


アンナに怒鳴られて小さくなってしまっているのは典子。


アンナの横で典子を見てニヤニヤと笑っているのはジュリ。


アンナとジュリはこのクラスで最も派手2人組で、みんな近づくのを恐れている。


3人を見ていると足元にパックのジュースが落ちていて、中身が出てしまっているのがわかった。


そして私はため息を吐き出す。


アンナとジュリの2人はよく通路にジュースを置いておく癖がある。


それを典子が蹴飛ばしてこぼしてしまったみたいだ。


典子が悪いわけじゃないと一瞬でわかったし、他のクラスメートたちもきっと気がついている。


けれどそれを指摘することができなくて、みんな遠くから様子を伺っているだけだ。