聞こえてくるのは2階、3階からの生徒たちの声。


時々足音と、さざなみみたいな風の音。


「私、1階のこの雰囲気が好き」


振り向きもしない美奈へ向けてつい言葉を発する。


美奈は一旦立ち止まって振り向くと「誰もいないから?」と聞いてきた。


私は首をかしげて美奈を見つめる。


「誰もいないことはないでしょ? 1階には職員室や保健室がある」


他にも多目的教室があったり、実験室もある。


「それでも、生徒たちの人数は少ない」


「そうだね」


私が頷くのを見て美奈はまた笑顔を浮かべると保健室の前で立ち止まった。


「ついてきてくれてありがとう」


ここから先は大丈夫だと突き放すような言い方だった。


私はうなづき、立ち止まる。


それならせめて美奈が保健室に入るまでを見届けようとその場に留まっていると、美奈は不思議そうな表情をこちらへよこし、そして保健室へと入っていったのだった。