人の悪意に触れてきれいな笑顔が歪められている。


その笑顔を見ているうちに、無意識のうちに両手を伸ばしていた。


同じくらいの身長の美奈を両腕の中に抱きしめる。


濡れて冷たいけれど、その奥から美奈の体温を確かに感じることができる。


「無理しないで」


耳元でささやくと美奈の体は細かく震えた。


まるで、今まで必死に堪えてきたものが抑えきれなくなって、堤防が決壊してしまったかのように感じられる。


しかし、それもすぐに終わった。


美奈は私の腕の中に軽く震えただけで、すぐに「大丈夫」と、力強い声で答えた。


イジメには屈しない。


そんな強さを感じて胸の奥がジワリと熱くなる。


本当はもっともっと強く抱きしめたい。


イジメなんて、私が消し去ってしまいたい。