生まれて始めて同性を見て胸がときめき、もっと近づきたい、触れたいと感じた。


あの時の美奈は膝から血を流していたんだ。


「体育の授業で、こかされて」


美奈がか細い声で答える。


その言葉に胸がギュッと締め付けられる。


やっぱりそうだったんだ。


あの時の美奈は今みたいに泣きそうな顔をしていなかった。


気丈な態度で傷口を清めていた。


だから私はなにも気がつくことができなかったんだ。


「ごめん、気が付かなくて」


思ったままを口にすると、美奈は驚いたようにこちらを見つめた。


「まだ、大丈夫だから」


「大丈夫って、なにが?」


「まだ、いじられてる程度のことだから」


そう言って微笑む美奈の表情はいびつだ。