髪の毛の先からポタポタと水滴が落ちて足元に水たまりを作っていく。


美奈は私と目があった瞬間更に表情を崩した。


そのまま出口へ向かおうとする美奈の腕を、無意識のうちに掴んで引き止めていた。


こんな状況で引き止めてどうするんだろう。


私はゆりえみたいに気の利いたことなんて言えない。


さっきみたいに、かすれそうな声でいみのわからないことをつぶやくだけで終わってしまう。


だけど、引き止めずにはいられなかった。


好きな人が今にも泣き出してしまいそうになっているのに、ほっとくことなんてできない。


「離して」


か細い声で美奈が言い、その声が震えていることに気がついた。


水に濡れて寒いからじゃないことはわかっていた。


「これ、どういうこと? なんでこんなことになってるの?」


私は美奈の腕を離すことなくそう質問した。


質問しながら怒りがこみ上げてきて早口になってしまう。


「そんなの、私にだって……」