濡れた床もホースのそのままにして。


私は呆然としてその光景を見つめていた。


世の中にはイジメというものが存在していて、それは時として被害者の命まで奪ってしまう。


その事実は知っていたけれど、こうして目の前でイジメの光景を見ることは初めてだった。


最初水を使っている彼女を見た時キレイだと感じた。


太陽の光に照らされて、まるで宝石を身にまとっているようだと。


だけど今回は違う。


狭いトイレの中、小さな窓から差し込む光は微弱で水は彼女を彩るための宝石にはなれない。


なにより、呆然と立ち尽くす彼女顔は歪み、今にも泣き出してしまいそうだった。


「な……んで?」


もっと他になにかいい言葉があったはずだ。


けれど私の口から漏れ出た言葉は、かすれて心もとない言葉だけだった。


その言葉に反応するように美奈が顔を上げる。