きっと相手が男の人だったとしても、私は今と同じように悩んでいただろう。


そうやって1日中美奈のことを考えていたせいか、校門を抜ける直前になって教室に忘れ物をしていることに気がついた。


カバンがやけに軽いと思ったら、今日の宿題に出ている教科書を持ってくるのを忘れてしまっていたのだ。


「もう、なにしてんの私」


自分へ向けて文句をこぼし、ひとりで来た道を戻っていく。


校舎内に入ると途端に生徒たちの姿は少なくなり、部室棟から吹奏楽部の音だけが聞こえてくる。


階段を一段飛ばしで駆け上がり、3年生のクラスがある3階までやってくると教室に残っている生徒たちはもう誰もいなかった。


3年生はすでに部活も引退しているし、学校が終わったあとは学校の図書室や塾などに行って勉強する子がほとんどだ。


私はそのどちらにも属さずに家に帰って1時間ほど勉強をして、後は好きにすごす。


もともと両親は厳しくなく、一人娘の私はこれまで自由に育てられてきた。