初めて森本美奈のことをキレイだと感じたのは、校庭に設置されている水道でのことだった。


その水道は公園にあるタイプのものと同じで、上部には飲めるように、下部には手を洗えるようになっている。


そこにいた美奈は擦りむいて血が滲んでいる膝を洗っているところだった。


前の授業の体育が終わったままの姿で、靴と靴下を脱いで膝に水を当てている美奈は少しだけ痛そうに顔をしかめていた。


その表情も水が光を受けてキラキラと輝く様子も、今でも鮮明に覚えている。


「どうしたの？」


私はまるで甘い水に吸い寄せられるほたるのように美奈へ近づいてそう聞いていた。


美奈は少し驚いたように制服姿の私へ視線を向ける。


「ちょっと、転んじゃって」


照れたように笑い、また傷口へと視線を落とす。


血はもう止まっていて、傷口も深くはなさそうだ。


「授業で？」