「美鈴、ごめん、俺の配慮が足りなかった」

「いいえ、父とは血の繋がりがないので、いつも私に対して厳しいんです」

「そうなんだ」

「特に戸倉さんの事になると全て従う様にって言われました」

「全て従うって大袈裟だろう」

「いいえ、私には戸倉さんの申し出を断ることなど出来ない立場だという事を肝に銘じる様に言われました、だから結婚をお引き受けします」

「それじゃ困る」

美鈴は驚いた表情で俺を見つめた。

「俺は美鈴と結婚したいが、心も手に入れたい、だから俺と入籍はしてもらう、もちろん俺のマンションに引っ越して貰う、ただ寝室は美鈴が心から俺を愛する気持ちになるまで別にする」

俺の言葉を美鈴は黙って聞いていた。

「でも、見せかけだけの夫婦ではなく、デートもするし、食事も一緒だ、俺を愛してくれるならなんだってやるよ」

「もし、ずっと私の気持ちが変わらない時はどうなさるおつもりですか」

「俺を誰だと思ってるの、美鈴は俺を好きになるよ」

「戸倉さん、自信満々ですね」