「どんな悩みなのか、聞かせてくれる?」

「まだいえない。まだ、ね」

「じゃあ、待つよ。その時が来たら、一番最初に教えてね」

「……うん」

「梨子ちゃんは覚えてる? 昔、ここで流星を観たこと」

「もちろん、覚えてるよ」

 あれは小学生の高学年のこと。
 当時は何年かに一度の流星群がすごく話題になっていた。
 みんな観たいと思っていたけど、夜遅くのことだったので、自宅から眺めるしかなかった。

 そんななか、わたしと梨子ちゃんはこっそりと家を出て、この場所を訪れていた。建物に空を遮られない場所として、多くの人がここで流星群を観ようと集まっていたから。

 流星群は予想以上にたくさん見ることができた。
 天候がよくて、雲に邪魔されることもなかった。あのときの景色はいまも胸に焼き付いている。

「いま考えると、遥ちゃんにひどいことをしたのかもしれないよね。目が見えないのに、流星群の観察に誘うだなんて」

 そんなことないよ、梨子ちゃん。わたしには見えてたよ、満天の夜空を、流れる星を。

「ううん。また流星群が来たら、誘ってね」

「今度は両親にちゃんと断らないとね」

「そのときはもう、大人になっているかもしれないよ」

 きっと大人になってもわたしたちの関係は続いていく。進学や就職で離れ離れになっても、この糸は切れたりしない。

「ところで遥、橘先輩との関係、聞いてもいいかな?」

「橘先輩との関係?」

「あれからどうなったのか、気になってるんだよね。進展はあったのかな?」

 わたしは即答できなかった。
 橘先輩とはなんの関係もないことは確かだけれど、あの話のどこまで伝えていいのかがわからなかった。