映画はアクションものだった。展開が早くて、内容はあまり理解できなかった。
 隣では来栖先輩が興奮気味に声を上げていたので、それはそれでよかったけど。

 映画館を出たあとはファストフードで軽く食事をすることになった。
 お腹はあまり減っていなかったので、わたしは飲み物を注文した。来栖先輩はセットメニューを頼んでいた。

 このあとはどこに行きたいのかを聞かれたけれど、部屋でマンガを読んだりスマホでゲームをするばかりだったわたしには、遊ぶという感覚があまりない。

 梨子ちゃんとはよく近所の本屋にはいったけど。梨子ちゃんは読書家で、わたしはマンガが好きだから。

 結局、店内でしばらく過ごすことになった。窓際の席でコーラを飲みながら、道路のほうに顔を向けてみる。

 目が見えないことにも、かなりなれてきたなと思う。いまだに人を個別に判断することはできないけれども、

「行きたいところがあれば遠慮なくいってくれよ。この辺りには一通りのものが揃っているからな」

「来栖先輩は普段、どういうところで遊んだりするんですか?」

 そこまでいって、わたしは来栖先輩が三年生であることを思い出した。

「あ、先輩は受験生ですもんね。そんな遊んでるわけにもいかないですよね」

「そんなこともないよ。最近は友達とライブいったりとかするかな。知り合いがバンドをやってるんだよ。その応援も含めてさ」

 わたしはライブなんて行ったことがない。
 好きな歌手はいるし、そういう場所への憧れもある。趣味の合うみんなと一緒に騒いでみたいとか。

「どうだ、今度一緒に行ってみるか?」

「え、ライブにですか?」

「おれが好きなバンドがツアーでこっちに来るんだよ。夏休みなら時間、空いてるだろ」